ひとりごと

第27回 鉱物油による地下水汚染時の鉱物油成分の経時変化

第27回 鉱物油による地下水汚染時の鉱物油成分の経時変化

 

重油等のタンクに亀裂が生じると,鉱物油が地下に浸透し地下水面に達することになる。鉱物油の多くは直鎖型の脂肪族炭化水素類であるが,少量ではあるが側鎖型の脂肪族炭化水素類や芳香族炭化水素類も含まれている。これらの成分はいずれも地下水面までは到達するが,直鎖型および側鎖型の脂肪族炭化水素類は水にほとんど溶解しないため,地下水面付近を移動することになる。ところが,芳香族炭化水素類は脂肪族炭化水素類より極性が少し大きいため,水に溶解しながら地層を移動していくことになる。したがって,鉱物油の地下水汚染で深度30m以深の地下水から検出されるのは,芳香族炭化水素類である。そして,鉱物油臭は芳香族炭化水素類に由来する。ちなみに,最も微生物分解を受け易いのは直鎖型の脂肪族炭化水素類である。

鉱物油による地下水汚染原因調査においては鉱物油の同定が必要になる。ここでガソリンは灯油,軽油,重油に比較して,トルエンの濃度が高いこと,高沸点化合物の濃度が低いことから区別できる。しかし,灯油と軽油の区別は困難であるが,軽油には3-メチルビフェニルが少量含まれるが,灯油にはあまり含まれないことから,3-メチルビフェニルとトリメチルベンゼン(両者に含まれる)との比を用いて区別することができる。重油(多く使用されるA重油は軽油に10%タ-ルを混ぜたもの)は前3者には非常に少ないタール成分由来のナフタレン誘導体が多く検出されることから区別できる。

しかし,汚染事故時の鉱物油の同定では,さらなる注意が必要である。我々は地下水の鉱物油汚染で,初期において軽油汚染と考えられる分析結果が得られたため,軽油による汚染であると報告した。ところが,6カ月経過後に重油由来の成分であるメチルナフタレン類が検出されるようになった。実際は,重油による汚染だったのである。つまり,土壌中でクロマト効果が作用し,メチルナフタレン類が遅れて検出されたためと考えられる。

土壌汚染調査においては,クロマト効果を考慮しておく必要がある。